女王バチ誕生の仕組み

王台の手入れをするミツバチ 養蜂

今回はミツバチの話。

女王バチというのは、素質も素養も関係なく「作られる」もんだよって話です。

ミツバチの女王がどうやって誕生するのか、いなくなってしまったときはどうなるのかを養蜂家目線で説明します。

女王バチは働きバチが作るもの

ミツバチのことをあまり知らない方でも「女王バチ」というのが巣の中にいることは知っているかと思います。

そして、その女王バチは巣の中に1匹しかいないこともよく知られています。

でも、この女王バチが実は「作られる」ものだということを知っていますか?

ミツバチの世界では働きバチが女王バチを作るのです。

2018夏生まれの新女王蜂のモニカ

中央に写っているお腹が長くてオレンジ色っぽい蜂。

これがミツバチの女王バチで、名前を「モニカ」と言います。

セイヨウミツバチです。

西洋(せいよう)の女王なので外国人の女性っぽく「モニカ」と名付けてみました。

モニカは数奇な運命を持つ女王です。

実はモニカは生まれながらのクイーン(女王)ではありません。

最初は姉達と同じ普通のワーカー(労働者)として生まれました。

でも、あるときに姉達から「お前はクイーンになりなさい」と言われ、クイーンとして育てられることになったのです。

それはモニカがまだ卵から孵ったばかりの小さな幼虫の時でした・・・ 。

ちょっとストーリー仕立てに書いてみましたが、要はこの女王バチはもとから女王になるべくして生まれてきたわけではない・・・ということが言いたかっただけです。

女王バチは産卵するし、体も大きいので、生まれながらに働きバチとは違うものなのだと思ってしまいますが、実は生まれたときの両者に違いはありません。

どちらも有精卵から生まれたメスの幼虫です。

*蜂は有精卵からメス、無精卵からオスが生まれます。

じゃあ、一体なぜ女王バチはあのような特別な姿や機能を持つようになるのかというと、それはエサの違いです。

簡単にいうと、特別なエサを食べ続けるとあんな風に特別な存在になります。

具体的には、卵から孵化して3日目までは両者共にその特別なエサを食べます。

でも、女王バチになる幼虫が蛹(さなぎ)になるまでその特別なエサを食べ続けるのに対して、働きバチになる幼虫は4日目以降になると違うエサを食べるようになるのです。

その違いが、女王バチと働きバチの違いを生み出します。

その特別なエサの名前は「ローヤルゼリー」です。

そう「ローヤルゼリー配合」とかのアレですね。

ミツバチの幼虫は栄養たっぷりのローヤルゼリーをたくさん食べると女王バチになれるのです。

取り残した王台とミツバチの写真

ただ、生まれた時の両者に違いはないとはいえ、育てられる部屋には違いがあります。

女王バチになる幼虫は、特別にあつらえた部屋で育てられるのです。

女王バチは体が大きくなるので通常の働きバチが育つ部屋では狭すぎるからです。

この特別な部屋を「王台(おうだい)」と呼びます。

写真の中央にある下向きに伸びた落花生(らっかせい)の殻みたいなやつが王台です。

この中に女王蜂になる幼虫が入っています。

女王バチがいなくなったらどうなるか

通常、女王バチの寿命や分蜂(巣別れ)など、新たな女王バチを迎える必要があるときには、働きバチはこの「王台(おうだい)」を作って古い女王バチに卵を産み付けてもらいます。

でも、事故(養蜂家が潰す、外敵が侵入してくる)などで急に女王バチを失った時にはそれができません。

なぜなら、王台を作っても卵を産み付けてくれる女王バチがすでにいないからです。

ミツバチ大ピンチです!

このままでは次世代をになう子供たちが生まれず、群れが崩壊してしまいます。

でも、大丈夫。

そんなときは、働きバチたちがスゴ技を発動するからです。

自分たちの群れに女王バチの気配がなく、次代の女王バチとなるべく育てられている王台もないとシックスセンスで感じ取った働きバチたちは「働きバチとして育つはずの幼虫」を女王バチに変える作業を始めるのです。

なぜなら先に説明したとおり、生まれたばかりの幼虫なら働きバチにも女王バチにもなれるからです。

具体的には、生まれて間もない小さな幼虫がいる「働きバチの育つ部屋」を無理やりひろげて「女王バチを育てる部屋」に改造するのです。

これを「変成王台(へんせいおうだい)」と呼びます。

変成王台の中にいる幼虫は、通常の王台と同じくローヤルゼリーをたくさん与えられて女王バチになります。

基本、変成王台から生まれようが、通常の王台から生まれようが、女王バチとしての能力に違いはありません。

羽化した女王バチは、普通に交尾して、産卵をはじめ、女王バチとしての生涯をまっとうします。

ちなみに、冒頭のモニカはこの変成王台から生まれた女王バチです。

モニカのいる群れは夏に女王バチがいなくなってしまい、働きバチが変成王台を作りました。

その変成王台から生まれたのがモニカです。

モニカはたくさんいる働きバチの幼虫の中から選ばれてクイーンになったのです。

庶民の生まれから女王へ・・・ という、シンデレラストーリーを歩んだ蜂なのでした 。。。

まとめ

2018夏生まれの新女王蜂が下向きになっている写真

女王バチは特別な存在ですが、決して生まれながらに特別な存在であるわけではありません。

特殊なエサを食べ続けることで特別な存在になるのです。

そして、そのエサを与えるかどうかを決めているのは働きバチです。

女王バチを育てるための部屋を作るのも、特別なエサを給餌するのも働きバチだからです。

ミツバチの世界では女王バチは働きバチによって作られるものなのです。

以上、女王バチは働きバチが作るものという話でした。

では、また ^ ^

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