人にハチミツを奪われるミツバチはかわいそうなのか?

蜂蜜の貯まった巣枠 養蜂

今回はミツバチの話。

ハチミツの収穫はミツバチ側にもメリットがあるよというはなしです。

採蜜しないとどうなるか、採蜜する目的を養蜂家目線で説明します。

採蜜はミツバチ側にもメリットがある

ハチミツっておいしいですよね。

パンにかけたり飲み物にいれたり、甘くて香り高くてとても好きです。

だけどそんな甘くて美味しいハチミツも元を正せばミツバチの大事な食料、それを人が奪い取るのはかわいそうではないか・・・ そんな風に思っている人いませんか?

そんな人に朗報です。

実は、人間がハチミツを採るという行為は、ミツバチにとってそんなに迷惑なことではありません。

というか、むしろ役に立ってます。

養蜂家がミツバチの巣箱からハチミツを採取することを「採蜜(さいみつ)」と呼びます。

この採蜜という行為は、一見するとミツバチから大事なハチミツを奪い取っているだけに見えますが、実は違います。

採蜜はミツバチ側にもメリットがあります。

そもそも養蜂家がハチミツを採る目的は人間が食べるためではありません

ミツバチを飼育し続けるために採っているのです。

そのうえで採れたハチミツを人が食べているだけです。

いわばおまけですね。

採蜜がミツバチ側にもメリットのあることだということを理解してもらうために、以下の二つに分けて説明していきます。

  • 採蜜しないとどうなるか
  • 採蜜の目的

採蜜しないとどうなるか

まず、ハチミツを収穫する「採蜜(さいみつ)」という行為を人間がしないと、ミツバチがどうなるかを説明していきます。

貯蜜スペースの拡大

ミツバチは自らの食料にするために花の蜜を集めています。

あつめられた花の蜜は巣房(すぼう)と呼ばれる六角形の部屋にためられてハチミツに加工されていきます。

ハチミツが完成すると、ミツバチは巣房を蜜蝋(みつろう)で蓋します。

蜜蝋はミツバチが体の中で作る蝋(ろう)です。

蝋で蓋をすることで、水分を吸収しやすいハチミツが外気に触れないようにするのです。

ミツバチはこれをひたすら繰り返します。

彼らには「たくさんあるから、ここらで集めるのをやめよう」という選択肢はないです。

とにかくこの活動を続けようとします。

産卵圏の圧迫

ただ、この「ハチミツを貯める」という行動も無限に続くわけではありません。

スペースの問題です。

ハチミツが貯蔵される巣房(すぼう)はミツバチが育児をするスペースでもあります

当然ながら、ハチミツの貯蔵と育児の両方で使っていたらすぐにいっぱいになってしまいます。

むしろ、一匹しかいない女王バチの産卵と、何千匹もの働き蜂が持ち帰る花の蜜を比べれば、持ち帰られる花の蜜のほうが圧倒的に多いです。

これは育児用のスペースがハチミツの貯蔵に使われてしまうことを意味します。

要は、ハチミツを貯めすぎて育児ができなくなるのです。

この状態を専門用語で「産卵圏圧迫(さんらんけんのあっぱく)」といいますが、産卵圏の圧迫により育児ができなくなるのはミツバチにとって一大事です。

自分たちのあとを託すものたちがいなければ、群(むれ)が滅亡してしまいますからね。

なので、ミツバチたちはスペースがなくならないように、花の蜜を集めると同時にどんどん新しい巣房をつくっていきます。

巣の中に隙間を見つけ、そこに新しい巣房を作って育児や貯蜜のスペースを拡張していくのです。

分蜂

でも、巣房をつくれる隙間がなくなったらどうなるのでしょう。

そうなるとミツバチは「お引っ越し」します

ただ、すべてのミツバチが出て行くわけではなく、巣の中にいるミツバチの半分だけが女王バチを連れて出て行きます。

新居で使うハチミツをお腹いっぱいにため込んでです。

俗にいう「分蜂(ぶんぽう)」です。「巣別れ(すわかれ)」とも呼ばれます。

出て行ったミツバチは新しい土地で、新しく巣をつくり、また同じように暮らしていきます。

巣房をつくり、育児をして、ハチミツをため、巣房がたりなくなったら隙間を探して巣房をつくり・・・ と繰り返して大きな巣をつくっていきます。

そして、元々の巣は新しい女王バチに託されます。

ハチミツと幼虫でいっぱいだった巣の中も、出て行った仲間がハチミツをたくさん持っていったので、十分な空きスペースができています。

新たにハチミツを貯めるスペース、育児をするスペースができたということです。

それに、外で働く人数(蜂数?)も半減しているので、以後はハチミツが貯まるペースも半減します。

残されたミツバチは、新たにできたスペースを使ってまた同じように暮らしていくことができるのです。

自然の営み

これがミツバチの自然な姿です。

ミツバチはハチミツをひたすら貯め続けます。

その結果、大事な育児をするためのスペースまで貯蜜に使ってしまいますが、分蜂することそれをリセットしているのです。

いわば、ミツバチは分蜂をするから生きていけるのです。

採蜜の目的

ざっくりいえば採蜜の真の目的は「分蜂の予防」です。ハチミツを貯めるスペースと育児をするスペース、要は生活スペースがなくなるから分蜂するわけです。

なので、ハチミツを抜き取ってその生活スペースを確保してやろうという話です。

養蜂家は分蜂を阻止するためにハチミツを収穫しています。

別の言い方をすると、ハチミツがいっぱい作られる時期にだけ、巣がハチミツでパンパンにならないように適度に収穫しているのです。

そうやってミツバチの生活スペースがなくならないようにして、ミツバチが分蜂しないように仕向けています。

ハチミツを収穫して空いたスペースは、ミツバチがすぐに新しい蜜でうめるか育児を始めます。

でも、しばらくするとまたハチミツが貯まって生活スペースがなくなってくるので、養蜂家がハチミツを収穫するということを繰り返しているのです。

もちろん生活スペースの確保が目的なので、巣箱にあるハチミツを全部抜き取ってしまうようなことはありません。

あくまでハチミツはスペースの確保作業で発生する副産物です。

採蜜は、ハチミツを収穫するのが目的ではなく、分蜂の予防、いわばミツバチの飼育を続けるために必要な作業なのです。

ミツバチの飼育を続けるために必要な「生活スペースの確保」をする過程で、たまたまハチミツをゲットできるってはなしです。

採蜜のデメリット

このように採蜜は「一応」お互いにメリットがあることになってます。

一応というのは、ミツバチにとって当面の生活に影響を与えなくても、「分蜂によって群れを増やす」=「子孫反映」という生物としての目的を阻害していることになるからです。

ただ、そこに関しても養蜂家がちゃんと対応しています。

分蜂をさせないのは自分の管理外になってしまうのが嫌なだけで、群れが多くなるのは養蜂家にとっても歓迎すべきことだからです。

なので、時期をみてちゃんとミツバチの群れを人工的に増やしてあげます。

人工的と言っても、養蜂家がすることは新しい巣箱をもうひとつ用意するくらいなもんですけどね。

この話は脱線するので、また今度にします。

とりあえず、採蜜はミツバチと養蜂家の両者にメリットのある行為であるということです。

ミツバチはかわいそうなのか?

なので、「人にハチミツを奪われるミツバチはかわいそうなのか?」と問われたら、「かわいそうではない」と回答することになります。

人がハチミツをとることで、ミツバチは生活スペースの確保というメリットを得られるからです。

それによって自らの意思での分蜂はできなくなりますが、群れの増殖は人の手で行われているので、まあ良いだろうということです。

ということで、個人的には「ミツバチは人にハチミツを奪われてもかわいそうでない」と思っています。

以上、ハチミツの収穫はミツバチにもメリットがあるというはなしでした。

ちなみに、分蜂して養蜂家の手を離れてしまったミツバチは翌春まで生きられる可能性が低くなります。その理由は別記事に書いていますのでよかったら読んでみてください。

では、また ^ ^

タイトルとURLをコピーしました