2018年8月某日、今年初めてオオスズメバチの襲撃がありました。
巣箱の出入り口にはオオスズメバチが入れないようにミツバチだけが通れる網目の金網を貼ってあります。なので、巣箱内への侵入は阻止できましたが、巣箱の前には累々たるミツバチの屍が広がっていました。
強者が弱者を喰らう。自然の摂理とはいえ何度見ても心が痛みます。
天災のようなものなのだと思って諦めている部分もありますが、我が社の社員が虐殺されるのを指を加えて見ているわけには行きません。オオスズメバチを捕らえるトラップを仕掛けておきました。
実は、オオスズメバチには決定的な弱点があるのです。
ミツバチを飼う人にとってはよく知られたことなのですが、一般にはあまり知られていないオオスズメバチとミツバチの関係、習性を利用した効果的なトラップのことを紹介したいと思います。
よかったら話のタネにでもしてください。
重要なこと
まず最初に、この記事はミツバチの巣箱を襲いにくるオオスズメバチをどうにかしようという趣旨だということをご了承ください。蜂場にくるスズメバチはエサ(ミツバチ)に夢中なことが多く、人間の存在をあまり意識していません。
自宅や公園などで見かけるスズメバチには絶対にやらないでください。
ミツバチ vs オオスズメバチ
毎年お盆の時期になると、オオスズメバチはミツバチの巣箱を襲いに来ます。
昆虫を食べるオオスズメバチにとって、ミツバチの巣箱がたくさん置いてある蜂場(はちば)は、効率的に狩りができるパラダイスです。なので、目をつけられると11月のはじめ頃まで毎日のように徒党を組んで蜂場に現れます。
オオスズメバチの狙いは「ミツバチの幼虫」です。
キイロスズメバチなど他のスズメバチは「ミツバチの成虫」をエサとして持ち帰るだけですが、オオスズメバチは巣箱の中にたくさんある「ミツバチの幼虫」を狙ってきます。
狙いをつけた巣箱の前に数匹で陣取って巣箱を占拠しようとするのです。
巣箱の中の幼虫をエサとして持ち帰るのが目的なので、立ち向かってくるミツバチには目もくれません。文字どおり大きな顎でちぎっては投げちぎっては投げ、ひたすらにミツバチを殺しまくるのです。
この占拠を目的としたオオスズメバチの攻撃とそれを阻止しようとするミツバチの戦いの中で「ミツバチの虐殺」が起きるのです。
熱殺蜂球(ねっさつほうきゅう)はニホンミツバチの必殺技
一方で、ミツバチにも集団でオオスズメバチに取り付いて熱でやっつける「熱殺蜂球」という必殺技があることが知られています。
でも、熱殺蜂球は日本の固有種である「ニホンミツバチ」の技です。
オオスズメバチの生息する日本という国で生き延びるために、ニホンミツバチが長年かけてあみだした一子相伝の必殺技で、外国からきた「セイヨウミツバチ」には使えないのです。
セイヨウミツバチの故郷であるヨーロッパには、オオスズメバチのように巣箱の占拠を目論むようなスズメバチがいないのが理由のようです。
セイヨウミツバチは日本では生きられない
必殺技を持たないセイヨウミツバチは毒針と小さな牙で立ち向かうしかありません。もちろん戦闘力に圧倒的な差があるので、立ち向かってもオオスズメバチに一蹴されるのが普通です。
なので、人の関与がないとセイヨウミツバチは日本では生きられないと言われています。
粘着板を使ってオオスズメバチからミツバチを守る方法
そんな弱っちいセイヨウミツバチである我が社の社員たちを守る「粘着トラップ」の作り方を紹介します。
これはオオスズメバチの持つある習性を利用したものです。
オオスズメバチの決定的な弱点
昆虫界では最強と思われるオオスズメバチですが、実はある習性のために決定的な弱点を作ってしまっています。
それは仲間を呼び寄せるという習性です。
嗅覚なのか視覚によるものなのか、はたまた両方なのか細かいことはわかりませんが、彼らは飛んでいる仲間を呼び寄せることができるのです。
「仲間を呼び寄せる」習性と「粘着板」を利用すると効果的なトラップを仕掛けることができます。
粘着板に「囮(おとり)」となる個体を付けておくと、オオスズメバチがワラワラとやってきて粘着板に捕えられてしまうというわけです。
面白いでしょ。
オオスズメバチにも有効な「ねずみ捕り」
トラップに使う粘着板は養蜂具屋さんで購入することができます。でも、要はネチャネチャしていれば良いので、ホームセンターで売っている「ねずみ捕り」で十分です。
屋外で使うので紙の部分に耐水性のあるものを使います。
捕虫網はオオスズメバチもとれる
子供が虫採りに使う網、捕虫網(ほちゅうあみ)を使って囮(おとり)にするオオスズメバチを捕まえます。飛んでいるオオスズメバチを粘着板ではたく強者(つわもの)もいますが、捕虫網で巣箱の周りを飛んでいるものをすくうのが一番簡単です。
いずれにせよ反撃が怖いので一発で仕留めます。
オオスズメバチの反撃を封じる技「踏みつけ」
捕虫網で捕まえたオオスズメバチは、割り箸や長いピンセットでつまんで粘着板にくっつけます。いじっているうちに反撃を食らうと怖いので網の上から軽く踏みつけて弱らせると安心です。
軽くがポイントです。囮(おとり)は活きが良い方が効果的です。
粘着板はミツバチの巣箱の上に置く
粘着板は狙われている巣箱の上に設置します。次々とオオスズメバチがつくので、その中から活きのいい個体を選んでトラップを増殖していきます。
粘着板を使ってオオスズメバチからミツバチを守る方法の弱点
粘着板を使ってオオスズメバチからミツバチを守る方法は、オオスズメバチの習性を利用したものなので、ものすごく効果があります。
でも、粘着板を使ってオオスズメバチからミツバチを守る方法も完璧ではありません。なので、ミツバチを守るためには粘着板を使ったトラップだけではなく、市販のスズメバチ補殺器や金網を併用することになります。
代表的な弱点は以下のようなものです。
オオスズメバチが来ないと使えない
まず、囮(おとり)が必要なので、オオスズメバチが来ないと使えません。オオスズメバチが来ないと使えないということは、いかに効果が高くても最初は被害が出る可能性があることを意味しています。
オオスズメバチ以外には効かない
また、オオスズメバチ以外のキイロスズメバチなどには効果がありません。オオスズメバチが仲間を呼び寄せるという習性を利用しているので、仲間ではないキイロスズメバチなどには効果がありません。
また、キイロスズメバチたちにはそのような習性がないので、囮(おとり)を使うトラップは使えません。
重要なこと
最後にもう一度、この記事はミツバチの巣箱を襲いにくるオオスズメバチをどうにかしようという趣旨だということをご了承ください。蜂場にくるスズメバチはエサ(ミツバチ)に夢中なことが多く、人間の存在をあまり意識していません。
自宅や公園などで見かけるスズメバチには絶対にやらないでください
学んだこと
- 異常気象だろうがなんだろうが、オオスズメバチは毎年くるもの
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