今回はミツバチのことを書きます。
養蜂と計算の話です。
養蜂をしていると必要になる計算のことを実技を含めて説明します。
ミツバチの成長スケジュール
養蜂家って自然のなかでのんびりとミツバチの巣箱をいじっているイメージがありますよね。
でも、実際は違います。
のんびりしているようにみえて頭の中はフル回転しています。
なぜならミツバチを飼うためには「計算」が不可欠だからです。
昆虫にしてはめずらしく育児をするせいかもしれませんが、ミツバチの幼虫は狂いなく同じスケジュールで成長します。
なので、その成長スケジュールさえ知っていれば、数日後の様子も数日前の様子も、現在の状況から推測することができます。
いまの状況をみれば「いますべきこと」と「これからすべきこと」が決められるということですね。
逆にいうと、計算しないと「いますべきこと」も「これからすべきこと」もわからないともいえます。
ミツバチの飼育には計算がついてまわるのです。
燻煙器をプカプカしてお気楽そうにみえる養蜂家も、ああ見えて頭の中は「計算」で大忙しなのですよ(笑)
ミツバチが大人になるまでの日数と、その寿命
ミツバチが大人になるまでの日数は性タイプによってちがっていて、働き蜂は21日、女王蜂は16日、雄蜂は24日になります。
さらに、この日数は、卵、幼虫、蛹(さなぎ)とそれぞれの形態ごとに決まっています。
働き蜂の場合は、卵が幼虫になるまでに3日、幼虫が蛹になるまでに6日かかります。そして、蛹が成虫になるのには12日かかります。
3+6+12=21日になるのですが、3、6、12と倍々になって行く数字に何か謎めいたものを感じてしまうのは私だけでしょうか・・・ 。
まあ、これはどうでも良い話ですね。
今回は省略しますが、女王蜂と雄蜂も同じようにそれぞれの形態ですごす日数がきまっています。
そして、大人になったミツバチの寿命もある程度は決まっています。
働きバチは5週間、女王蜂は2~3年です。
雄蜂は女王蜂との交尾に文字どおり命をかけていて、交尾に成功するとそのまま死んでしまいます。他にも諸事情があるのですが、雄蜂のことを語りはじめると長くなるので別の機会にします。
では、ここからは実際に「働きバチが21日で大人になり、5週間で寿命をむかえる」という知識をつかって、巣箱の中のミツバチがどんな状況なのかを推測してみることにします。
対象は女王蜂は「作られる」ものであるで紹介したモニカの群れです。ちなみにモニカは女王蜂の名前です。
先日(9月8日)、巣箱のなかをみたらミツバチが減っていました。彼らにいま何が起きているのか? なにかしなければいけないのか? を考えます。
モニカの群れの基本情報
- 7月27日に女王不在となった
- 8月25日に新女王(モニカ)の産卵を確認(小さい幼虫がいた)
- 9月8日に巣箱の中を見たらミツバチ(成虫)が減っていた
何が起きているかを推測する
これらの情報をもとにいろいろ計算すると、こんなことがわかります。
9月8日現在「巣箱の中のこどもはすべてモニカの娘で、大人はすべて50代以上のモニカの姉妹で20代~40代の若手は一人もいない。しかも、大人の数は通常の半数以下になっている」ということです。
ひとつずつ解説していきます。
子供はすべてモニカの娘、大人はモニカの姉妹
まず、モニカの娘が大人になるのはいつかを考えます。
8月25日に小さな幼虫がいたということは、21日間あるこども時代のうち少なくとも3日は経過していることがわかります。卵が孵化するのに3日かかるからですね。
なので、18日後の9月10日以降にならないとモニカの娘たちは羽化しないことがわかります。大人になるのに21日かかるからです。
ということは、9月8日に巣箱の中にいる大人たちは、すべて先代の女王蜂の娘でモニカの姉妹だということになります。モニカの娘たちはまだ子供で羽化していないからです。
では、子どもたちのほうはどうでしょう。
これはすべてモニカの娘になります。先代の女王蜂の娘、モニカの姉妹はいません。それは先代の女王蜂がいなくなったのが7月27日だからです。先代の女王蜂の子供は21日後の8月17日にはすべて大人になっているのです。
だから、9月8日の時点で巣箱にいるミツバチは、大人はすべてモニカの姉妹、子供はすべてモニカの娘となります。
大人の数と世代別の構成
次に大人の数とその世代別の構成の問題です。
これは産卵がなかった期間が関係します。モニカたちの場合は先代がいなくなった7月27日からモニカが産卵を開始するまでの期間です。8月25日にはすでに幼虫がいたので、その3日前の8月22日が産卵を開始した日になります。卵が孵化するのに3日かかるからですね。
だから、7月27日から8月22日までの期間が産卵がなかった期間になります。三週間以上ですね。
ミツバチの大人になってからの寿命は五週間くらいです。そのうちの三週間以上が人口が増えない期間なのです。
人でいえば50年のうちに30年以上こどもがうまれてこないことになります。
結構ヘビーですよね。
寿命で日を追うごとに大人の数が減っていき、最終的には通常の半分以下の大人の数になるということです。
さらに、世代別の人口にも空洞がうまれます。ミツバチを20歳で大人になり70歳で寿命をむかえる人間にたとえると、9月8日現在、巣箱の中にいる大人は一番わかくても50代ということになります。
なぜなら、いちばん若いミツバチは8月17日に羽化したものなのだからです。
- 20代 1週目(8月17日~8月23日)
- 30代 2週目(8月24日~8月30日)
- 40代 3週目(8月31日~9月6日)
- 50代 4週目(9月7日〜9月13日)
- 60代 5週目(9月14日~9月20日)
推測した結果から対処法を考える
無事に世代交代をしたモニカたちですが、だいぶゆがんだ社会構造になっていることがわかりました・・・。
じゃあ、なにか手を打つかという話になりますが、未来をになってくれるモニカの娘たちはちゃんと育っています。
ゆがみは徐々に修正されていくはずなので「あたたかくみまもる」という結論になります。
まとめ
今回のはなしをまとめるとこんな感じです。
- ミツバチの飼育には計算が不可欠。
- なぜなら、ミツバチが大人になる日を計算して、しなければいけないことを考えるから。
- 働き蜂は大人になるまでに21日間かかり、大人になったら5週間で寿命をむかえる。
以上、知れば誰かに話したくなるミツバチと算数のはなしでした。
では、また^ ^